応用生物科学専攻 動物遺伝育種学分野/京都大学農学研究科

動物遺伝育種学分野

動物の形質が遺伝し発現するメカニズムの全貌を解明する

動物に現れる様々な形質が子や孫にどのようなメカニズムで遺伝してどのようなメカニズムで発現するのかについては未解明な部分が多く残されています。当分野では、糖尿病の動物モデル、和牛など日本固有の資源動物、トキやコウノトリなどの希少動物を対象として、分子遺伝学と統計遺伝学を基盤として最新のオミクスやシステム生物学的アプローチを駆使することにより、動物の「面白い」生命現象の解明に挑戦するとともに資源動物や希少動物の遺伝的評価・育種改良・保全法の確立に関する研究を進めています。

質的・量的形質の遺伝・発現メカニズムの解明

1. 糖尿病をモデルとする遺伝形質の発現メカニズムの解明

糖尿病は、複数の遺伝因子と環境因子との相互作用により発症する多因子遺伝性疾患であり、多因子遺伝の代表的なモデルとして知られています。私たちは糖尿病を自然に発症するマウスやラットを対象として、従動物遺伝育種1来からの交配実験と表現型解析に加えて次世代シーケンス解析やメタボローム解析など最新のオミクスアプローチを駆使することにより、糖尿病の発症に関与する遺伝子の同定と発症メカニズムの解明を進めています。

 

2. ヒトとウシにおける骨格筋内の脂肪蓄積形成機構の解明

ヒトの加齢に伴う骨格筋量と骨格筋力の低下はサルコペニアと呼ばれ、深刻な健康問題となっています。サルコペニアや肥満・糖尿病では骨格筋内に脂肪蓄積が見られますが、その形成メカニズムは明らかでありません。一方、日本が誇る黒毛和種牛は、霜降りと呼ばれる筋肉内への脂肪蓄積(脂肪交雑)の能力が高いという特徴を有しています。骨格筋内の間葉系前駆細胞が脂肪細胞の起源であることが報告されており、この細胞はヒトの筋内脂肪とウシの霜降りの共通の起源と考えられます。私たちは医学と農学の融合研究として、ヒトとウシにおける骨格筋内脂肪蓄積形成機構の比較研究を行うことにより、普遍的なメカニズムならびに種や病態に特異的なメカニズムの解明を進めています。

 

資源動物の遺伝的評価・育種改良・保全法の確立

動物遺伝育種学分野 資源動物の育種改良

3. 資源動物の遺伝的多様性や有用形質の評価、育種改良、保全法の確立

黒毛和種牛に代表される和牛は日本固有の貴重な遺伝資源です。その遺伝的多様性を保持しつつ、有用形質を評価し、育種改良して利用していくことが求められています。私たちは和牛の遺伝的多様性の評価、有用形質の評価、育種改良、保全法の確立を目標とする研究を行っています。

 

4. 特別天然記念物トキやコウノトリなど希少動物の遺伝的多様性の評価、個体分類、保全法の確立

動物遺伝育種学分野 佐渡トキ保護センター特別天然記念物トキおよびコウノトリの増殖と試験放鳥が国家的プロジェクトとして進められています。特に保存集団の遺伝的多様性の維持は、プロジェクトを推進する上で非常に重要な課題です。DNAマーカーの大規模開発とタイピング法の確立、個体識別法や遺伝的多様性評価法の確立、免疫系に関与しゲノム内で最も多型が多いとされる主要組織適合遺伝子複合体(MHC)領域のゲノム構造と多型の解析に関する研究を進めています。(画像は、佐渡トキ保護センター提供)

 

 

キーワード

質的・量的形質、分子遺伝学、分子代謝学、病態生理学、統計遺伝学、システム生物学、オミクス、ビッグデータ、糖尿病、肥満、サルコペニア、脂肪交雑(霜降り)、骨格筋、筋内脂肪、希少動物、遺伝的多様性、遺伝的評価、育種改良、個体分類、動物保全、マウス、ラット、和牛、トキ、コウノトリ

教授:横井伯英

准教授 : 谷口 幸雄

TEL:075-753-6322
E-mail:yokoi.norihide.5w@kyoto-u.ac.jp
URL:http://www.jkaabs.kais.kyoto-u.ac.jp/